執筆者: 木ノ下 千栄(きのした ちえ) |
◆上賀茂と下鴨、なぜ「カモ」の字が違う? 京都に遊びに来られて、「上賀茂神社」と「下鴨神社」の字の違いに気づかれた方は、なかなか鋭い方です。 この両神社の「上賀茂」「下鴨」の名称は、もともと二つの神社があわせて「賀茂社」と総称されていたのを、上の社を上賀茂神社、下の社を下鴨神社と分けて呼んだことからきています。しかし同じ「カモ」でも字が違いますね。なぜでしょうか? もともとこの一帯は、古代豪族であった賀茂氏の勢力地でした。ですから本来は「上賀茂」「下賀茂」と書かれていたのです(ちなみに中世の文献では「下鴨」は「下賀茂」と記述されています)。その上、上賀茂神社の正式名は賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)、下鴨神社の正式名は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)です。祭神の名前も「賀茂別雷神」(上賀茂神社)、「賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)」で「賀茂」の字を用いています。
ではどうして「下鴨」だけ「鴨」となってしまったのでしょうか? 上賀茂神社、下鴨神社にお尋ねしたところ、大体次のようなことをご説明下さいました。
「『上賀茂神社』の呼び名も『下鴨神社』もいわゆる通称名です。正式名称はそれぞれ『賀茂別雷神社』、『賀茂御祖神社』で、どちらも「賀茂」と書きます。全国に賀茂社の末社は約1000社近くありますが、それらも「賀茂」「加茂」「鴨」と様々に使われており、どの時点でその漢字を使用するようになったかは、今では分かりません。(概要)」
つまり、この説からは「上賀茂」「下鴨」の字が現在違うというのはあくまで通称名のレベルの話で有り、この字はいつの間にか定着してしまった当て字のようなものと考えてよいと思われます(※)。 (※)学術的には他の説もあります。ここでは一例を紹介いたしました。
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