◆下京の、知られざる光源氏ゆかりの地「枳殻邸」
2008年は、源氏物語千年紀。源氏物語が紫式部によって書かれたと記録される年から、今年はちょうど1000年に当たります。千年紀を記念して、今回は下京区にある、あまり知られていない源氏物語ゆかりの地をご紹介いたしましょう!
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枳殻邸の正面大門。 |
「枳殻邸」、はてさて、何と読むでしょう?「キコクテイ」です。枳殻邸の正式名は「渉成園(しょうせいえん)」といいますが、造園当時、周囲に「枳殻(からたち)」を生垣として植えたことから、「枳殻邸」という別称を持っています。私たち地元の人には「キコクテイ」の名で親しまれています。
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現在でも残る、枳殻(からたち)の生垣 |
枳殻邸(渉成園)は、江戸時代に三代将軍・徳川家光から東本願寺の別邸として寄進された御殿ですが、その昔、平安時代前期には左大臣・源融(みなもとのとおる)が営んだ「六条河原院」の旧蹟であったという伝説があります。
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河原左大臣・源融(822-895) |
この源融こそ、あの『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルではないかと言われる人物です。
源融は嵯峨天皇の第十二子として生まれながら、臣下の源氏姓を賜り、侍従、右衛門督、大納言などを歴任し、左大臣となりました。光源氏も帝の子でありながら、臣下として「源氏」の姓を名乗ることになりました。
物語での光源氏の住居は「六条院」、源融が住んだ場所も「六条河原院」と呼ばれていたそうで、六条河原院跡と伝説の残る枳殻邸(渉成園)にくると、まるで光源氏が実在していたかのような錯覚を覚えてしまいます。
源融は六条河原院を造営する際、奥州塩釜の風景を模して庭を造ったといわれ、わざわざ尼崎から海水を運ばせて、池を作ったと言われています。そのため、庭内には、「塩釜」の井筒、「塩釜の手水鉢」などが景物として残されています。また、源融の供養塔もこの地に残っています。
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源融ゆかりの供養塔。源融は『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルの一人といわれています。 |
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塩釜の手水鉢。手水鉢の一形式として全国の庭園にある「塩釜の手水鉢」の手本(オリジナル)となるもので、枳殻邸(渉成園)の目玉です! |
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塩釜の井筒。その形が、塩を製造する塩釜とそれを屋根で覆う塩屋のありさまに似ていることから、塩釜と呼ばれているそうです。 |
◆市内屈指の、京都タワーの名所
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実はこの枳殻邸(渉成園)、京都タワーが庭越しに見える穴場スポットなのです。ほら、見てください、この景色!!(↑)
京都タワーが池に映って、本当にキレイですね〜♪ 過去と現在が同居しているみたいです。 |
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枳殻邸(渉成園)は本当に広大!昔は外の景色はちょっとビルが入ってしまう箇所もあるのですが、京都の市内中心とは思えないほど、庭園内は静かで、自然豊か。途中の「獅子吼(ししく)」は、必見の価値ありです!
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「獅子吼(ししく)」。池の水源の一つで、通常みられるような滝の石組みではなく、山腹から湧き出す泉のような形式で造られています。市内なのに、山中に来たみたいですね! |
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まるで、東福寺の回廊のような造り。時代劇にも使われそうな、風情ある趣きです。 |
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池に浮かぶこの大島は、豊臣秀吉が天下統一の象徴として京都の都市改造を目指して築かせた「御土居(おどい)」の跡だそうです。 |
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静寂をたたえる、苔生した手水鉢。 |
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回廊と茶室「縮遠亭(しゅくえんてい)」。この茶室から東山三十六峰の一つ、阿弥陀ヶ峰の遠景が縮図のように見渡せたことから、この名がついたそうです。 |
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正面受付を入ってすぐの、この景色!この時期は、梅や水仙が咲き誇り、春への期待を感じさせる陽気でした。 |
◆枳殻邸(渉成園)のお花たち ちょっとご紹介・・・
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鮮やかな色彩の梅。 |
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水仙の白と黄色が、凛としてさわやか。 |
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白い壺形の花のアセビ。たわわです。 |
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庭内の梅林。紅梅・白梅が20株ほど植えられています。
芳醇な香りが漂ってきました。 |
◆枳殻邸のあちこち・珍しい建物がいっぱい!・
先ほど、枳殻邸(渉成園)は江戸時代に東本願寺の別邸として造られたと書きました。東本願寺は茶の湯との関わりが深く、園内には多くの茶室が建てられています。また、文人趣味にあふれる建物も多く、昭和11(1936)年に国の名勝に指定されました。
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珍しい形の「傍花閣(ぼうかかく)」。左右の側面に山廊と呼ばれる階段の入り口があり、階上には四畳半の部屋が設けられています。建物の傍らには桜並木が広がり、春にはその名のとおりの景色を見ることが出来るでしょう。 |
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ここから二階へと上がっていきます。面白そう!! |
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庭内「蘆庵(ろあん)」の前庭に建てられた、
珍しい形の屋根の中門。 |
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河原町通りから見た、枳殻邸(渉成園)の外壁。古びた感じが歴史を感じさせます。 |
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「本願寺」の刻印がされた、屋根瓦。 |
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外から見ても、竹が生い茂り、庭内の自然の豊かさを感じ取れます。 |
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人慣れしている、池のぬしたち。手もたたいていないのに、人の気配で寄ってきます(汗)。 |
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門を入ってすぐ正面にみえる「高石垣」。切石、礎石、石臼、瓦など多彩な素材が使われています。 |
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なんだか芸術的にさえも見えますね。 |
桜の時期は特に訪れてみたい枳殻邸(渉成園)。あまり知られていないので、参拝者も少なく、ゆっくりと庭内を散策できそうです。
雅な王朝文学の源氏物語が紫式部によって作られて、2008年で千年になります。
千年の時空を超えて、源氏物語の世界を和菓子で表現いたしました。
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史跡案内:下京区 河原町正面東側 枳殻邸(渉成園)HP(電話番号 075-371-9210)
※甘春堂本店より徒歩約5分、甘春堂東店より徒歩約8分
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